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2001年8月11日
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青山円形劇場 |
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出演 |
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maki(piano),
mihoko(soprano), sayaka(cello), yuri(marimba,
perc.), arata(Guitar), kominato(尺八) |
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桐壺が光源氏を生んだ晩の夜がイメージ。
なぜか夜なのに辺りは薄明るい感じ。世にも稀なる美しさを兼ね備えてしまったのは幸か不幸か? |
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帝の愛を一身に受けたが、身分が低かったこともあり他の女性たちの反感を買い、光源氏が幼いころ亡くなってしまう。
ピアノソロの静かな曲だが、母親の限りない愛情と息子を育てることができなかった彼女の無念を感じてほしい曲。 |
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異母兄弟にあたる帝が惚れている女性に、光源氏は横恋慕してしまった。
この帝の母は、光源氏の母を虐め殺したような女性で、政治の世界でもとかくライバル的存在であった。
よって光源氏と恋に堕ちた自分の妹にあたる、朧月夜に対しても相当腹をたて、また光源氏にいたっては須磨へ流してしまった。でもこうなる事は予想できただろうに、そういう状況でも恋愛関係になった二人の情熱、またもともと祝福されないからこそ、盛り上がってしまう歪んだ部分を
D.Guitarで象徴したかった。
また、それに対する対旋律の尺八は帝であり、朧月夜自身の応えである。
恋闇というプロローグでは忍ぶ恋に溺れる二人のけだるさを尺八で、朧月夜では反復されるギターのメロディが悲しい結末を迎える暗示をしている。 |
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最初の正妻。まだ光源氏若かりし頃、政略結婚のような形で結婚した相手。
よって、あまりそこに愛情はなかったが、男児(夕霧)は生まれた。
が、六条御息所の怨霊が彼女に乗り移り、出産後まもなく他界。
そんな短い人生だったこともあり、あまり愛情を表現できる間もなく亡くなった無念と、光源氏の苦悩(藤壺との禁断の恋)を横で眠る彼の夢のなかでの懺悔より聞いてしまったため、深まってしまった愛情を切々とした響きがする曲にしたかった。それにはチェロとソプラノの
2重奏が一番合っていた。
光が一筋もささない寝室で、重大な秘密を知ってしまった葵上の苦悩を表現。 |
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彼女は、光源氏が須磨に流されて寂しい生活をしていた時に、出会った。
正妻であった紫上は自分が都で耐えていた間、光源氏が恋に堕ちたこの明石を許せず、最後までやはり嫉妬の対象であり、なにかと彼女の動向が気になり、一時的ではあるが彼女の生き甲斐である娘まで取り上げてしまった。
明石はのちに后の母になるくらい地位が高くなるが、やはり自分の出生による身分の低さを感じており、決して出しゃばったり教養をひけらかしたりはしなかった。よって控えめな女性というイメージが強いが、意志は強く、また運命の強さも類いまれである。
マリンバというぬくもりのある木の楽器の音で、須磨出身という彼女の素朴さ、そして都に帰ってしまった光源氏との身分の違いから成就しない愛の絶望感で遠くを見つめている風景を感じ取ってもらいたい。
また娘を一時期、紫上に取り上げられた悲しみをソプラノで表現。 |
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愛した男性に対し、素直になれない女性は多く、またその男性が魅力的で、また自分以外にもいろんな女性を愛せる男性だとすれば、ひねくれた感覚になるのもわかる気がしてしまう。
空蝉も、やはりそういったタイブで、耐えて忍んで待っている態度を露骨に表すことなどできるわけもなく光源氏に対しても、とかく想いがうまく伝わらなかった。
そういった自分の生き方からの回避と、光源氏の言動に対する情けない気持ちから、早々と尼になってしまった。
でもある意味できっと光源氏への愛に未練もあったはずである。
そこで、思うようにならない現世に幻滅した空虚感をピアノのアルペジオで表した。 |
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光源氏と
30年連れ添った妻。一番幸せだったという捉え方もあるが、一番悲しみを背負った女性でもある。
光源氏の理想の女性像となるよう、幼少のころから人形を操るように育てられ妻になったが、亡くなるころにはそんな育て方をした光源氏を哀れと思えるほどにまで、彼女の気持ちは達観していった。
次々と現れる女性に執心する光源氏の行動に嘆き悲しみ、また一方で温かく迎え、共に生きた女性。
いろんな出来事が彼女の中を走馬灯のように過ぎ去った歴史を風が吹いていったように 6人の奏者で表現。 |
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礼泉帝(光源氏の異母兄弟)がもっとも愛した娘。
行く末を心配し、いろいろ複雑な想いがあったであろう光源氏に嫁がせた。
あまりにも帝に大事に育てられた無垢な御子であったため、光源氏の愛情が薄いことにもあまり最初は気付いていない。
そんな彼女のまだあどけない頃を、やわらかくピアノで表現。 |
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女三ノ宮がその後、道ならぬ相手と恋愛関係になってからの精神的崩壊を音にした。
彼女は周りがもどかしいくらい恋愛に関して奥手だったが、人生で経験しなくてもいいことを背負ったため、誰にも気持ちを打ち明けず封印したなかで、道ならぬ相手を愛した。
でも彼女は人一倍受けた傷が深かったため、悟りへの道も早かった。
一寸先が何も見えない状況と、彼女の背負った数奇な運命の重さ(暗さ)を表現。
どの楽器もかなり劇的または、ヒステリックに演奏すべき? |
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まだ光源氏が若かりしころに惚れた女性。彼女は光源氏にとって居心地のよい女性であった。
美しさもあり、何ごとにも無邪気で、子供まで授かった男性との間が上手くいかなくとも決して文句も言わず、嫉妬もせず、、、といった有様。主張のない彼女だからこそ、光源氏が犯した大罪の犠牲となり、呆気無く亡くなってしまったのかもない。
この曲は彼女が突然亡くなった前日に光源氏と縁側で夕陽をみながら、緩やかな時の流れを楽しんでいた状況と彼女のあまりにも突然の辛い運命を悲しむ気持ちから、生まれた。
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夕顔の娘にあたる。母親の突然の死が公表されなかったために、その後の人生が翻弄された。
が、幸運にも都に帰れる機会が訪れ、また光源氏が父親代わりとして大事に面倒をみた。
光源氏は例のごとく母親の面影を残す彼女に魅力を感じていたが、とても珍しいケースだが恋人関係にはならなかった。(そういう縁をつくれなかった。)
それが、その後の彼女の人生を幸福にしたか不幸にしたかはわからないが、淡い美しさがつきまとうイメージがある。
余韻を楽しむような演奏を期待? |
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前帝の未亡人で教養の深い女性だったが、光源氏の執拗な求愛に応じてしまう。が、その後光源氏の愛が冷め、彼女の苦悩は始まる。それはのちに他の女性への怨念へと変わるとされているが、それは光源氏が感じている罪悪感か?
マリンバとピアノで、彼女の怨念がエスカレートしていく心理状態を表してみた。
最後には葵上をのろい殺してしまうほどの恐ろしさもあるが、それでもこのやるせない気持ちに一番苦しんでいるのは彼女自身だったということをエピローグのピアノで表現。
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光源氏と紫上に長い間仕えた女性。まだ小さいころから紫上に人一倍可愛がってもらうが、やはり光源氏からも女性としての対象になってしまい、紫上への罪悪感をもちながら奉公した。
彼女亡き後は光源氏をなぐさめながら生活し、最後まで断られたにも関わらず、出家した光源氏についていき、尼になった。よって光源氏を看取った女性ということになる。
取り上げた女性のなかでは異端で、彼女自身に主張はほとんどなく、女主人である紫上をとても尊敬しているため、全てがフィルターがかかった状態で見えてしまう女性である。
でも人生を終えようとするとき、連れ添ってほしいのはこういう空気を持つ女性なのかも知れない。 |
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光源氏の父である帝の妻であり、光源氏とは実の兄妹のように育った。
桐壺(光源氏の母)の死後、しばらく立ち直れなかった帝は、彼女にそっくりであった藤壺に出会い、生涯深く愛した。
また帝の息子、光源氏も彼女を生涯を通し、深く愛していた。
人は時に残酷で、自分本位の行動で人を深く傷つけてしまい、大事なものを壊してしまう。
私には、光源氏の自分本位の欲望がこの女性への想いとして象徴されている気がしてならない。
歯車(ギア)がひとつ噛み合わなくなると、全てが崩壊してしまう。女性の後ろ姿のしなった曲線、これはいろんな痛みを背負いながら、美しさをとどめている。光源氏を愛してしまったために、苦悩を抱えた彼女達がそれでもなお赤でも青でもない妖しい光(紫)を放っている魅力に対し、敬意を表し作っていった。
藤壺は光源氏を愛し、まただからこそ彼を遮断した。それがどれほどの精神力であったかを音に出来たらと思う。
外側に見えてこない内なる魅力、それを久方ぶりに読んだ源氏物語で感じたことから、code"M" FileNo.3 は幕を明けた。 |
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